さっちゃんのまほうのて
「さっちゃんのまほうのて」 作:たばたせいいち 先天性四肢障害児父母の会 のべあきこ しざわさよこ 発行:株式会社偕成社
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さっちゃんは きょう、
とっても おかあさんに なりたかったのです。
おかあさんに なって、みんなに おやつを あげたり、
あかちゃんに ミルクを のませたり したかったのです。
ほんとは、ようちえんの ままごとあそびの
おかあさんですけどね。
「さっちゃんは
おかあさんには なれないよ!
だって、てのないおかあさんなんて
へんだもん。」
「おかあさん、さちこのては どうして みんなと ちがうの?
どうしてみんなみたいに ゆびがないの? どうしてなの?」
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柳田邦男氏の「人生の1冊の絵本」という新書の、
最初に紹介されている絵本。
とても読むのがつらそうな本だな、と思ったが、
読後感は、わりとさわやかで、とてもよかった。
それは、さっちゃんの両親がとても率直で、前向きなこととか、
幼稚園の先生やおともだちが、これもやっぱり率直なことが、
さわやかさを感じさせたのだろう。
さっちゃんの手は先天性のもので、
生まれた時からゆびがなく、
もちろん指が生えてくるなんてことはもうない。
それでも指のない手が、おかあさんにとっては「かわいいさっちゃんの手」だし、
おとうさんにとっては「魔法の手」なのである。
これから先、さっちゃんにはさまざまな困難が訪れるだろうけど、
両親の愛があれば、周囲の理解があれば、
きっとすてきなおかあさんになれるよ。
大人も子どももぜひぜひ読んでいただきたい一冊です。
“Satchan no Maho no Te” by Tabata Seiichi,Nobe Akiko,Shizawa Sayoko(1985)
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