ジャングルジム
「ジャングルジム」 作:岩瀬成子 絵:網中いづる 発行:ゴブリン書房
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おねえちゃんは目をまっ赤にして、
玄関に立っていた。
「泣いたの?どうしたの」と、
あたしはきいた。
思いがけず、年上の子と〈どっちが強い〉か決めることになった小学生の女の子・すみれ。
あたしはばかだ、と思った。
どうして、こんなことになっちゃったんだろう。
こんなこと、したくない。いやだ。だめだ。
少女の揺らめく気もちをこまやかに描いた表題作「ジャングルジム」をふくむ五編を収録した短編集。(小学中級から)
いろんな家族がある。子どもにとっては、いっしょにくらしている人は家族だ。
家族はいっしょにごはんを食べたり、あそんだりする。
でも、それだけじゃなく、ときには気もちがばらばらになることもある。
さみしい気もちになることもある。
人生のいろんなことを考えるもとになっているのが家族だと思う。──岩瀬成子
(ゴブリン書房HPから)
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家族をテーマにした5本の短編からなる1冊です。
短いですが内容はけっこうしっかりしています。
どれもそれぞれおもしろいです。
「ジャングルジム」「色えんぴつ」「からあげ」あたりは特によかった。
「ジャングルジム」
おねえちゃんがいじめられて帰ってきたのを見た妹が「ふくしゅう」をするという話。
ジャングルジムでどちらが高いところから飛び降りれるかという競争をする。
勝負は妹が勝つのだが、なんでこんなことしちゃったのか、と後悔する。
けがまでしちゃったし。
この後おねえちゃんはいじめられなくなったのか。
それはわかんないところがいいですね。
「色えんぴつ」
パパが病気で亡くなった。でも私は泣かなかった。
パパの形見の色えんぴつでたくさん絵を描いた。
そうしたらお兄ちゃんが色えんぴつを貸してくれ、という。
かえってきたら色えんぴつが削られて短くなっている。
私は大事な色えんぴつを短くされて、悲しみが爆発する。
「パパは死んじゃったんだよ」
きょうだい二人で思いきり泣く。
子どもには子どもなりの悲しみの表現のしかたがあるんですね。
「からあげ」
おばあちゃんが亡くなって一人ぼっちになったおじいちゃん。
お試しでぼくの家に泊まりに来た。
おじいちゃんが来たことで家族の様子が変わった。
ぼくもおじいちゃんと公園に行って、
コンビニで買ったからあげをおじいちゃんと一緒に食べたりして。
おじいちゃんの気持ちを考えたりするようになる。
少子高齢化社会。
こんなことも身近にありそうですね。
おじいちゃんの気持ちがちょっとわかるような気がします。
おとなが読んだ方がおもしろいかもね、と思う一冊です。
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