サナギの見る夢

サナギの見る夢

「サナギの見る夢」 作:如月かずさ  発行:株式会社講談社

「仮面のピーターパン」が本当に現れた!!
ワタルのクラスでは小学生最後の思い出に男子全員で映画をとることになった。
監督兼脚本を担当するワタルを中心に順調に撮影がスタートしたはずだったが……。

(講談社HPから)

ちょっと読むのがつらくなりました。
主人公のワタルがどんどん自分を追い詰めていくところが。

6年生のワタルのクラスは、卒業記念に卒業パーティーをやることになった。
グループを作って出し物を披露しようという企画である。
ワタルたちは男子全員で映画をつくることにした。
謎の怪人「仮面のピーターパン」が現れるホラーミステリーだ。
撮影は順調だったが、突如「仮面のピーターパン」が出没するようになる。
ここでごたごたがあり、クラスが2つに割れてしまう。
私立中学受験者とそうでないものとだ。
映画の撮影は受験の妨げになるというわけだ。
ワタルはクラスの輪が乱れてしまったことに心を痛める。

それとは別に、ワタルは家に問題を抱えていた。
ワタルは父を亡くしており、母子2人で暮らしてきた。
その母が再婚したいと言い出した。
しかしワタルはそれが(表向きいい顔をしているが)気に入らない。
その男桜井さんが家に入ってくるようになり、ワタルは学校のことと相まってイライラが頂点に達する!

ここらあたりの心理描写がていねいでよいと思いました。

そして、今は亡きおとうさんが蝶のサナギを見つけたワタルに言い残した言葉が物語を丸くまとめます。

「サナギから蝶になれば、姿かたちは全然違うものになってしまうけど、サナギのときの気持ちが消えてしまうわけじゃない。
だからこの蝶たちは、たとえ仲間と離ればなれになってしまっても、いつかまた別の場所で出会ったときには、
昔のように心を通わせることができる」

「春が来れば、時間が過ぎれば、いろいろなものが変わっていく。
でもね、変わらないものもあるんだよ。
変わらずに残しておきたいと強く願う気持ちがあれば、
想いや絆はきっと変わらずにそこにあり続けるんだ。それにね」

「それにね、ずっとサナギのままでいたら、こんなきれいな桜を、見逃してしまうじゃないか」

サナギのワタルたちが蝶になって飛び出してゆく、そんなお話だったんですね。

 

“Sanagi no Miru Yume” by Kisaragi Kazusa(2009)