二日月
「二日月ふつかづき」 作:いとうみく 絵:丸山ゆき 発行:株式会社そうえん社
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あたしの妹、1歳の芽生。
まだ歩けないし、立てないし、ハイハイも、おすわりもできないし。
そういうことができるようになるかもわからない。
だけど、芽生はあたしのそばにいる。
あたしはいつも、芽生のそばにいる。
(そうえん社HPから)
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いとうみくさんの本をまた読みました。
この本は読書感想文コンクールの課題図書だったそうです。
たしかに、感想文が書きやすそうな本だとは思います。
とにかくぼくが声を大にして言いたいのは、「この本はいい本だ」ということです。
杏の妹芽生は出産時のトラブルが原因で、障害を持って生まれてきました。
お父さんもお母さんも、芽生にかかりっきり。
自分のことをほったらかしにされた杏は、お母さんに八つ当たりしてしまいます。
ここらへんの、杏の複雑な思いがわかりやすく描かれていて、すごいなと思いました。
取材とかいろいろされたんでしょうか。
――迷惑だよ。
――かわいそう。
――なりたくてなったわけじゃない。
みんなのことばが、あたしのうえに落ちてきた。迷惑ってことばだけじゃない、
藤枝君がいった「かわいそう」も、真由のことばも、いやだった。不快だった。
他人に好奇心であれこれいわれたくない。思われたくない。見られたくない。
同情も、あわれみも、いらない。
けど……。
いちばん最低なのは、あたしだ。
なにもいわなかった。いえなかった。なにもできなかった。
あたしの内側にあるなにかが痛い。ちょうど薄紙でスッと指を切るような痛さ。
そういう痛み。致命傷にはならないけど、何日もそこだけがジンジン痛む。
(83ページ)
この描写は小学生の心理描写なのかな、と思ってしまったけど、女の子は小学生でもこれくらいのことを考えるのかな。
ともあれこういう文章が出てくると、これは大人も読まなきゃ、と思います。
他にもいいところがあるんですが、それは読者の方にゆだねましょう。
ぜひいろいろな人に読んでもらいたい一冊です。
“Futsuka Duki” by Ito Miku(2015)