ロンドン・アイの謎

ロンドン・アイの謎

「ロンドン・アイの謎」 作:シヴォーン・ダウド 訳:越前敏弥 発行:株式会社東京創元社

12歳のテッドは、いとこのサリムの希望で、巨大な観覧車ロンドン・アイにのりにでかけた。
テッドと姉のカット、サリムの三人でチケット売り場の長い行列に並んでいたところ、
見知らぬ男が話しかけてきて、自分のチケットを一枚ゆずってくれると言う。
テッドとカットは下で待っていることにして、サリムだけが、たくさんの乗客といっしょに大きな観覧車のカプセルに乗りこんでいった。
だが、一周しておりてきたカプセルに、サリムの姿はなかった。
サリムは、閉ざされた場所からどうやって、なぜ消えてしまったのか?
人の気持ちを理解するのは苦手だが、事実や物事の仕組みについて考えるのは得意で、気象学の知識は専門家並み。
「ほかの人とはちがう」、優秀な頭脳を持つ少年テッドが謎に挑む。カーネギー賞受賞作家の清々しい謎解き長編ミステリ!

(東京創元社HPより)

シヴォーンさんといえば「ボグ・チャイルド」。
10年以上前に読んでいる。
とても歯ごたえのある本だった(らしい)。
それとくらべればこちらはだいぶライトだと思う。
しいていえば、主人公テッドがアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)だという点が目新しい。
発達障害の一種で、知的障害はともなわないものの、こだわりや苦手なことがいろいろあることが特徴である。
(テッドは気象に関する知識はプロ並みだが、語学教科は苦手とか、地図が読めないとかある)
そのテッドがサリムの行方を見事推理するのだからすばらしい。
われわれより思考能力が論理的なのだ。

そんなテッドはものの見方も独特だ。そこにこの物語の肝があると思う。
「ぼくは頭をかいた。どう見るかによってちがう――ひとつのことが、同時に正反対のことにもなる。
いつかカットが見せてくれた滝の絵を思い出した。そこでは、水が上に向かって流れて見えるように描かれていた。
そういうことが、サリムの失踪を解決する手がかりになるかもしれない。
カットとぼくは、上下さかさまに、または反対の向きから物事を見ているのかもしれない。
ぼくはわくわくした。物事をちがう見方で観察するのは得意だからだ。
小さいころ、ぼくは卵を三つの輪で表現して描いたことがある。
殼、白身、黄身だ。土星みたいに見えたけど、学校の先生は卵をそんなふうに描くのはとても珍しいと言ってくれた。
まるでぼくの目がⅩ線で、卵を透視したように断面を描いている、と。」
(126ページ)

硬直したわれわれの目。事件を解くのは、そして新しい発見をするのは、いつもとちがう視点で見ることが必要なんだ
そんなことを思いながらこの本を読んだ。

 

“THE LONDON EYE MYSTERY” by Siobhan Dowd(2007)