ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計

ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計

「ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計」 作:いとうみく 絵:佐藤真紀子 発行:株式会社童心社

細川糸子と同級生の、町田良子、坂巻まみ、滝島径介。そして、転校生の日野恵。この5人の視点で語られる、5つの物語。

6年1組・細川糸子。がさつで粗雑と言われるが、そのまっすぐな言葉は、かかわる人に時に大きな影響を与えることを、当の本人は知るよしもない。おいしいものを食べることが生きがい。
糸子が盲腸で入院している間に転校してきた日野恵。糸子との距離をグイグイつめて親友であろうとするが、糸子にはその真意がはかりかね、消耗するばかり……。
転校すればリセットできる。新しい自分になれる、そう思っていたけど、わたしはニセモノの仮面をかぶっていただけ。そんなわたしに本当の友だちなんてできるはずがない。
町田良子。才色兼備でクールな一面の裏で、糸子との出会いによって、他者とかかわる心地よさに気づき、あるべき自分を探し求める。思いはことばにしなきゃ伝わらない。わたしもいつかきっと。
坂巻まみ。町田良子に憧れる気持ちの真ん中にある、自分自身の感情に気づき、疑い、うろたえて、やはりそうなんだと自覚し向き合う。いまはまだこの思いを言葉にして伝えることはしない。でもいつか、自分自身を好きになれたらそのときは。
滝島径介。母は深夜までスナックで働いている。アパートでふたり暮らしの生活。思いがすれちがう日々。話をしよう。母さんの気持ちを聞いて。オレの思いを伝えて。母さんに大事なことをあきらめてほしくない。オレもオレが幸せになることをあきらめたりなんてしない。ちょっと図々しくなればいい。だいじょうぶ。

前作『糸子の体重計』では5年生だった子どもたちは、6年生になった。
相変わらず、小さなことでいじけて、羨んで、けんかして。
うじうじ悩んで、転んだりへたりこんだり、だれかのせいにしたり、逃げたり。
そして迎える、卒業式??

定価1,650円 (本体1,500円+税10%)
初版:2022年5月27日
判型:四六判/サイズ:19.4×13.4cm
頁数:312頁
小学5・6年~
ISBN:978-4-494-02077-5
NDC:913

 

(童心社HPから)

「糸子の体重計」を読んだのは、この本を読むためでした。
前回の豪快な表紙から一転して、食卓にたべものがのっているおしゃれなイラストになりました。
なんと前作から10年経っての続編です。
スマホが出てきたり、LGBTの話題が出てきたりします。

内容は前作同様、5人の視点で学校生活が描かれる。
ただ5人のメンバーは前作の高峯さんがぬけて、転校生の日野恵ちゃんに変わった。
転校ばかりして友だちとなかなかうまくできない子だ。
めぐぽんが糸子にひっついてくるので、糸子はとまどってしまう。
マイペースの糸子だけに、人に引っ付かれるのは苦手なのだ。
さあどうするか?

まあ、5人いれば5人の悩みがあるわけで、そこのところを明確な答えは出ないにしても、
少し明かりが見えた、ぐらいのところで書いている。
読者に「ああこんなことあるな」「こんな子いるな」みたいに感じさせる。
そこのところがこのシリーズの良いところだろうと思った。

作者のインタビューが童心社のホームページにのっていたが、
このシリーズはこれでおしまいだそうである。
ぼくは中学生の糸子の話も読んでみたいと思うのですが、どうでしょうか?
きっとマイペースで大暴れ(?)する糸子さんが見られると思うのですが…。

 

“Chiisana Utyuu no Tobira no Mae de” by Ito Miku(2022)