糸子の体重計
「糸子の体重計」 作:いとうみく 絵:佐藤真紀子 発行:株式会社童心社
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食べることが大好きな細川糸子、クールビューティー・町田良子、大柄な転校生・高峯理子、
町田良子にあこがれる坂巻まみ、細川糸子とは給食の天敵・滝島径介……5人の子どもたちの平凡な日々。
つらいこと、悲しいことはしょっちゅうだし、どうしようもなく苦しいときもやってくる。
そんなとき、クラスを見渡せば、細川糸子がいる。
誰に対しても真っ正面から向き合い、しっかりと相手を見て、思ったことを口にする。
大人も子どももじたばたしてけんめいに生きている、そんな地に足のついた読みごたえある物語。
第46回日本児童文学者協会新人賞
日本図書館協会選定
全国学校図書館協会選定
第24回(2012年)読書感想画中央コンクール小学校高学年向け指定図書
第42回新潟県課題図書読書感想文コンクール
第36回長野県読書感想文コンクール課題図書
定価1,540円 (本体1,400円+税10%)
初版:2012年4月25日
判型:四六判/サイズ:19.4×13.4cm
頁数:256頁
小学5・6年~
ISBN:978-4-494-01956-4
NDC:913
(童心社HPから)
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表紙の絵が豪快でよい。
「糸子の体重計」というタイトルだが、
内容的には同じクラスの五人の小学五年生をそれぞれ語り手に据えた
オムニバス形式の連作長編(こういう言い方でいいのかな)である。
ただ物語の中心には常に糸子が存在しているという感じだ。
糸子はフルネームが「細川糸子」なのだが、
食べることが大好きな「太った」女の子である。
彼女は性格も豪快で給食のおかわりを滝島径介と争ったり、クラスの女王様町田涼子に大声でけんかをふっかける。
でも明るくて表裏の無い性格だ。
町田良子はそんな糸子が「うざくて」きらいなのだが、でも心のどこかでは、そんな糸子を認めているところがある。
糸子は、現代にはまれな「肝っ玉かあさん」(古)的キャラクターなのである。
こんな子がクラスにいたら、クラスの雰囲気が明るくなるだろうな、と思わせるキャラクターだ。
もちろん実は糸子にも悩みはあるのだが、それを上回るパワーがある、
ってな感じだろうか。
まあ糸子の話ばっかりじゃないので、全部豪快な気分になるわけじゃないのがちょっと残念だが、
(個人的には全部糸子主人公でよかったのじゃないかと思うのだが)
多分糸子だけじゃ間が持たないと思われたんでしょうか、他の4人の視点の話もあるわけなんですね。
ともあれこの本は糸子で持っている本だ、とは思いました。
とてもおもしろかったので、みなさまもぜひ。
続編もこの度出たようですので、それも読んでみようと思います。
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