セカイを科学せよ!

セカイを科学せよ!

「セカイを科学せよ!」 作:安田夏菜 発行:株式会社講談社(講談社❖文学の扉)

灘中学校入試問題にも使われた、日本児童文学者協会賞受賞作『むこう岸』の安田夏菜、書き下ろし最新作!

藤堂ミハイル――堤中学二年。父は日本人、母はロシア人。髪は栗色、瞳は茶系でくっきりとした二重まぶた。
そば屋でそばなんか食ってると、「まあっ、日本人みたいにおはし使ってる」と知らないおばさんに騒がれたりする。
山口アビゲイル葉奈――転校生。ルーツはアメリカと日本。モコモコとふくらんだカーリーヘア。肌の色は、ちょっとミルクの入ったコーヒー色。
縦にも横にも大きい。日本生まれの日本育ちで、日本語しか話せない。好きなことは……。
すべてが規格外の転校生は、オタク的に「蟲」が大・大・大好き! カミキリムシ、カナヘビ、ワラジムシ、ハエトリグモ……!!
教室のあちこちから上がる悲鳴!!! クラスは騒然!!!!
ミハイルと葉奈、そして科学部の面々は、生物班の活動存続をかけ、学校に「科学的な取り組みの成果」を示さなければならないことになってしまった。
ミックスルーツの中学生が繰り広げる、とってもコメディでバイオロジカルな日々をご覧ください!

(講談社HPから)

楽しい本である。
2人のハーフ(こういう言い方はいいのかな)が主人公。
ミハイルは見かけはロシア人だが、中身はすっかり日本人化してやたらと気を使うようになった小心者(?)。
葉奈は日本でしか生活したことがないがマイペース「蟲オタク」少女。
転校してきた葉奈が、科学部に「生物班」を復活させて、学校で「蟲」を飼いだすところから物語は動き始める。
カナヘビ、ワラジムシ、カ…。学校で飼うにはヘビーな生き物が次々と登場する。
最初はみんなからいやがられていた蟲たちだったが、ミハイル(根が虫好き)たちの理解を得るようになって、種類がふえていく。
ところが、学校の部活で生き物を飼う以上、生き物の研究をしてその成果を発表するように、と校長から厳命され…。

生き物の話とそれを受け入れられない人たちとの葛藤、ハーフの主人公たちの悩み、それらが絡み合って物語が展開されるのがこの本の肝だ。

「わたしは人間が特別な生き物だなんて言ってません。(だいぶ略)哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ホモ・サピエンス種
(また略)生物学的に、すべてのヒトはその分類です。きれいごととか、きたないごとじゃないんです。
科学的にはそれが事実なので」

白人とか黒人とか黄色人種とか、なになに民族とか。そういう分けはあるがDNA的にはヒトは同じ種に属するのだそうだ。
だからヒトはみな同じなかまなんだってこと。
人種差別とかはおかしいってこと。
ま、そういうことを言ってるんだな、この本は。

「コメディ」と帯には書いてあったが、それほど笑えるわけじゃない。それでも重くなりそうな内容を軽く笑い飛ばす、くらいのおかしさはあって、
好感が持てました。
うーん、もうひとつさえない感想で申し訳ないです。

 

“Sekai wo Kagaku Seyo!” by Yasuda Kana(2021)