てっぺんの上

てっぺんの上

「てっぺんの上」 作:イノウエミホコ 絵:スカイエマ 発行:文研出版

 

「遠くへいきます」 そう書かれたメモを残して母親がひとり家を出たのは、エナの5年生の入学式の日だった。
エナの心には、それからいつも罪悪感が付きまとう。
家を出る直前、「どこにでも行けばいい」と母をなじったのは自分だったからだ。

(文研出版ホームページより)

エナは物語を作るのが好き。
みんなエナの物語を読みたがるが、特定の友だちはいない。
そんなエナに友だちができる。イラストを描いている亜美だ。
エナは自分の物語に亜美のイラストをつけて本にしたいと思うようになった。
亜美はエナを自分の家に呼ぶ。
エナは亜美と母親の楽しそうな姿を見て、自分の母親のことを思い出す。
自分の母親が家を出ていったなんて亜美ちゃんに言えない。
エナは心から打ち解けることができなかった。

もうひとり友だち?ができる。
スーパーで出会った隣の小学校の「焼きそばくん」、レオくんだ。
ひとりで買い物に来ていたレオに、自分と同じにおいを感じるエナ。
レオに教わった勝頂山に二人で登ることになる。
山のてっぺんから何が見えるのか――

お母さんを追い出したのは自分じゃないか――と悩むエナ。
おばあちゃんの家は自分の家じゃない。だから友だちは呼べない、と悩むエナ。
どれも、普通の家庭の子どもなら悩まなくていいことですよね。
でも「運悪く」そうなることもある。
そんな時、作者のイノウエさんは「見方を変えよう」と提案します。
エナたちも、山の上から自分たちの住む町を見下ろした時、いつもとちがう景色だと気づきます。

そして今までの自分の生き方を変えていこうと思います。

シンプルな物語ですが、きちんとツボはおさえている、なかなかよい物語でした。
エナのおばあちゃんや、お父さんもいい味を出しています。
子どもたちにも、大人にも読んでもらいたい一冊です。

 

“Teppen no Ue” by Inoue Mihoko(2020)