きみが、この本、読んだなら ざわめく教室編

きみが、この本、読んだなら ざわめく教室編

「きみが、この本、読んだなら ざわめく教室編」 作:戸森しるこ おおやなぎちか 赤羽じゅんこ 池田ゆみる 絵:吉田尚令 発行:株式会社さ・え・ら書房

 

「ねえ、この本、読んでみたら」
こころがざわめいて、どうしようもない。
この気持ち、この本で伝えたい―

いつも人形をかかえている、ふしぎな同級生のきみへ
友だちにハブられて学校に行きたくない、妹みたいなきみへ
母さんの思いがつまった本を、クラスのみんなときみへ
生命のつながりに気づいた、おさななじみのきみへ
―大切な人へ本をすすめる、4つの物語。

(さ・え・ら書房ホームページより)

本をめぐる4つのお話。
短編、なのでとても読みやすく、すぐに読めてしまった。
短編、なのであまり深くテーマに突っ込めないきらいはあるが、まあそれはしかたない。
それぞれのお話の最後に、「おすすめ本」(まあ本文で取り上げられた本ですね)が書かれており、
ちょっとしたブックガイドにもなっている。

気に入ったのは、最初に置かれた「クロエ・ドール」(戸森しるこ作)。
他の3作がリアルな学校生活を描いているのに対して、これだけ(まあこれも学校生活がメインだけど)
ファンタジーな世界なんですな。
広湖ちゃんが学校で人形を持ってきて、授業中も肌身離さず持っている、
しかもそのことを誰もとがめないとか、
広湖ちゃんと人形が会話してたり、
その人形のクロエが主人公の夢の中に出てきたりとか。
まあありえないことが主人公のまわりにおきるけど、
主人公と広湖ちゃんをつなぐのが『りかさん』という梨木香歩さんの本なんだ。
『りかさん』は市松人形の名前で、主人公と話ができる、というところが広湖ちゃんとクロエとの関係と
(多分)同じなんでして。
主人公は『りかさん』を読んで、広湖ちゃんとの共通性を感じ、広湖ちゃんに本を貸す。
ここで主人公の夢の中にクロエが出てきて、クロエと広湖との関係や、『りかさん』をゆずってほしい、と主人公に話してくる。
広湖ちゃんは本のお礼に、『ありがとうのえほん』を主人公にくれる。微笑とともに…。
なんか何言ってんだかわかんなくなってきたな。
まあなんか不思議な後味のお話だったね、これは。

「好きな本が同じだと、それだけで心と心が近づいた気になれるんだ。友達になれた気になるんだ。」

これは「『ダレカ』をさがす冒険」(赤羽じゅんこ作)から抜き書きですが、本を媒介にして友だちをつくれたらいいですね。
自分の周りには本を読む人がいないんで、なかなかこうはいかないですけど。

“Kimi ga Kono Hon Yonda Nara” by Tomori Shiruko,Ooyanagi Chika,Akahane Junko,Ikeda Yumiru(2020)