水を縫う

水を縫う

「水を縫う」 作:寺地はるな 発行:株式会社集英社

【第9回河合隼雄物語賞受賞作品】

松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、
かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。
そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。
世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。

【著者略歴】
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年『ビオレタ』でポプラ社新人賞を受賞しデビュー。
『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』『夜が暗いとはかぎらない』『わたしの良い子』『希望のゆくえ』など著書多数。

(集英社HPより)

この本は読書感想文コンクールの課題図書(高校生の部)でした。
今ごろ読み終わったんです。(宿題にまにあってないがね)
「清々しい家族小説」とありますように、章ごとに家族それぞれの立場で、
水青の結婚を軸にして物語が展開していきます。
主人公の(?)清澄は姉の結婚式に「ウェディングドレスを縫ってあげる」と宣言する。
お姉さんはひらひらきらきらしたドレスは嫌だとおっしゃるんですね。
しかし素人になかなかできるもんじゃない。
清澄は、服飾デザイナー(?)の離婚した父親に助けを求めますが…。

「清澄」という名前を父親がどういう由来でつけたか、を語ったところ。

「清澄は、病院についてから三十分もかからずにするっと生まれて、
でもやっぱり産声は流れる水の音みたいに聞こえました。
(中略)流れる水はけっして淀まない。常に動き続けている。
だから清らかで澄んでいる。
一度も汚れたことがないのは『清らか』とは違う。
進み続けるものを、停滞しないものを、清らかと呼ぶんやと思う。
これから生きていくあいだにたくさん泣いて傷つくんやろうし、
くやしい思いをしたり、恥をかくこともあるだろうけど、
それでも動き続けてほしい。
流れる水であってください。」(223P)

なかなかすてきな一言ですね。
自分が子ともにつけた名前は、さほど意味を込めてつけなかったので、少し反省です。

ともあれ、「清々しい」一冊だとは自分も思いました。
高校生諸君がどんな感想を持ったか?みんなむずかしいこと書くんだろうか、
自分の体験を織り交ぜて書くのかな?
感想文も読んでみたいものですね。

ってことで、みなさまもぜひ。

 

“Mizu wo Nuu” by Terachi Haruna(2020)