彼方の光
「彼方の光」 作:シェリー・ピアソル 訳:斎藤倫子 発行:株式会社偕成社
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黒人奴隷の少年サミュエルは、年老いたハリソンから、カナダへの逃亡を告げられる。
親代わりのハリソンを一人で行かせるわけにはいかず、
サミュエルはハリソンとともに北をめざす。
自由になるための、終わりなき旅がはじまる。
(帯より)
黒人が奴隷として酷使されていた時代、1859年。
黒人が脱走する<地下鉄道>の実話をもとに、逃げる黒人の、行動や心情を描いた作品です。
次々と起こるピンチ、そしてそれを助けてくれる人々(必ずしも善意の人とはかぎらないが)。
ハラハラドキドキで、とても読みやすい。
一気読み、とあるのもうなずけるところ。
サミュエルはハリソンにいらんことばっか言って、そのたびにたしなめられる。
11歳ではこんなものなのかな、と思いつつ、でもちょっと頼りないなとも思う。
それだけにラストの「どんでん返し」にはスカッとさせられる。
(どんな内容かは読んでみてね)
黒人の人たちがどれほどつらい目にあってきたかは、ハリソンの言葉などで示される。
要するに人間扱いされていないのである。
アメリカは自由の国だ、などと言っているがそれは大きなまちがいだ。
差別は今でも根強く残っている。
ブラック・ライブズ・マターの運動はいまもって黒人差別があることのあらわれだ。
この物語は黒人奴隷の逃亡を描いただけだが、その背後にあるものに思いをいたすことが大切なのだ。
日本人のわれわれも、差別のない社会をめざして生きていきたいものである。
“Trouble Don’t Last” by Shelly Pearsall(2002)