青春ノ帝国

青春ノ帝国

「青春ノ帝国」 作:石川宏千花 発行:株式会社あすなろ書房

中学教師の関口佐紀は、帰宅準備をしていた職員室で、なつかしい人からの電話を受けた。
かつての同級生、奈良くんからの電話。
「久和先生が亡くなった」という知らせだった――。

佐紀が中学2年の時。
弟が通う「科学と実験の塾」の塾長が久和先生だった。
そして奈良くんは塾長のおい。
佐紀は鳥目の弟を迎えに塾に通っていたが、
いつしか塾長や奈良くんと深く関わるようになる。
中学で孤立していた佐紀にとって、塾はただ一つ自分を認めてもらえる場所だった――。

学校で、友だちもほとんどいない、勉強も得意でない、目立つことをすると同級生ににらまれる、
そんな佐紀が、久和先生や塾の助手の百瀬さん、奈良くんと、塾で接するうちに、次第に自分に自信を持ち、
学校でも認められるようになっていく――まあ簡単にまとめるとそんな感じ。
女子の心理がじっくりと描かれていておもしろかった。
それと佐紀の周りの大人――久和先生と百瀬さん――がとても印象的に描かれている。
子どもの成長に、大人の存在は不可欠であることを再認識させられる。
自分が、自分の子どもたちにどんな影響を与えてきたか。
どれほど「生きざま」を伝えてきたか。
正直ほとんどないな、と言わざるをえない。
子どもたちは、外でいろんな大人と接して、自分たちで成長していった。
まあそれならそれでいいか、と思うしかない。
情けない親である…。

本の内容から離れてしまったが、本は読みやすくおもしろかったので、みなさんぜひどうぞ。

 

“Seusyun no Teikoku” by Ishikawa Hirochika(2020)