てのひらに未来
「てのひらに未来」 作:工藤純子 絵:酒井以 発行:株式会社くもん出版
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琴葉は町工場の社長の娘。両親、弟、そして住み込みで働く天馬と暮らす。
工場は金属加工をしていて、医療機器から宇宙航空関連の部品まで、数ミリのものから大きなものまでつくっている。
父親はひと目見ただけで、ミクロン単位の誤差がわかるという。
琴葉は工場のことはあまり好きじゃないようだが。(女の子だからオイル臭いのはいやだろうね)
その工場が、経営難に陥っている。
ある部品を作るのをことわったからだ。
父親を責める琴葉、止める天馬。天馬に向かって琴葉は言葉を投げつける。「家族でもないくせにっ」。
しかし父には父の考えがあった。
そして天馬の別れた家族にも、難しい事情があった。
「大人の事情」にぶつかりながら、天馬やさより(琴葉の親友)とぶつかりながら、
琴葉は少しづつ成長していく。
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後味がさわやかな物語。
工場の娘と、住み込みの青年、というのがちょっと古臭いけど、
まあさわやかにまとまっている。
父親がつくるのをことわったのが、ミサイルの部品だったとか、
天馬の祖母が戦争孤児で苦労したこととか、
「戦争」がサブテーマとなっている。
琴葉たちは「無言館」で、戦争で命を落とした画学生の絵を見て、
亡くなった画学生のことに思いをはせる。
「――あたしにできることを見つけたい。平和な未来につなげるために。」
「――世界から憎しみを消したい。消さなくちゃいけない。オレ自身からも、」
世界が平和であるために、町工場でできることはあるのか?
ひとりひとりができることはあるのか?
それは読む人ひとりひとりが考えて、実行していくことなのだろうと思います。
読みやすい一冊なので、大人の方もぜひ読んでみてください。
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