月と珊瑚

月と珊瑚

「月と珊瑚(るなとさんご)」 作:上條さなえ 発行:株式会社講談社

六年生になった大城珊瑚は、沖縄民謡を歌うのは得意だが、(祖母のルリバーに教わっている。ルリバーは民謡歌手なのだ)
勉強は不得意で、特に漢字が書けない。自分の名前の「珊瑚」が書けないのだ。
クラスメートの詩音にも「あなた、ほんとに六年生?}ときびしくダメ出しされてしまう。
珊瑚は、「勉強をがんばる」とちかう。
まずは漢字からだ。日記をつけよう。お母さんからもらった辞書を使って。

珊瑚のクラスに東京から泉月(いずみるな)という女の子が転校してきた。
まるでベルばらのオスカルのようにかっこいい彼女に、
珊瑚の胸は「ドキ、ドキ」するのだった…。

珊瑚の家は貧しくて、母親が福岡へ出稼ぎしている、とか(父親はいないぞ)とか、
ルリバーは酒場で民謡を歌っているとか。
スマホがほしいけど、無理かな、と思っているとか。
ルリバーからは「おまえは勉強もできんし、民謡歌手になるしかない」と言われていたり。
沖縄ならではの「ジュリ馬まつり」とか「慰霊の日」とかも織り交ぜて。
珊瑚がだんだん成長していって、漢字もたくさん覚えていくようすがいきいきと描かれています。

この本、読書感想文の課題図書なんですが、その割になかなかおもしろかった。
沖縄の子どもってこんな風なのかなって想像できた。
ちなみに、作者の上條さんは東京生まれで、現在沖縄在住という方です。

一か所ルリバーの語った部分を引用いたしましょう。この部分は小学生向きとは言いにくい内容で、
それゆえに「よく書いてくれた、すばらしい」と思ったところです。
「あんなー、新都心通りを、たまに大きな声で『島唄』を歌いながら歩く女の人、みたことあるわな。
あんたはそのたび、ミーの服をつかんで、こわそうに女の人をみたやろ。
あの女の人な、昔、十代のころにアメリカの兵隊におかされたんよ。それも数人に。
で、そのショックで、ああなったんやけど、ミーはな、生きているあの女の人をみるたび、
『よくぞ、死なんでいてくれた』って、心の中で頭を下げてるさー。
女に生まれるゆうことは、やっかいなこともある。でもなぁ、沖縄に生まれた女は、生きぬかなきゃいけんのよ。
この島は血と涙とさんごしょうでできてるって、ミーは思う。
女がよ、新しい命をうみつづけることで、新しい沖縄になると、ミーは信じてるから。」

子どもも大人もぜひご一読ください。

 

“Runa to Sango” by Kamijo Sanae(2019)