ぼくを忘れないで

ぼくを忘れないで

「ぼくを忘れないで」 作:ネイサン・ファイラー 訳:古草秀子 発行:株式会社東京創元社

マシューは統合失調症だ。治療の一環として、文章を書いている。
この本は、その文章だ。
マシューにはサイモンというダウン症の兄がいた。
サイモンの死はマシューにとって大きな痛手となっている。
それはなぜなのか。
そして、統合失調症の症状が悪化して入院させられるマシュー。
果たしてマシューに明日はあるのか?

この本はYA――というより一般書だろうなと思う。
主人公が統合失調症ということで、物語は単純に時系列通りに並んでおらず、
正直つかみづらい。
あと入院しているところなど、あまり面白いとは言えない。

というか、個人的には自分の精神病院入院時のことを思い出した。
体に問題はなく、精神的に不安定、という状況で3か月も入院するのは、
本当につらかった。
周りにはけっこうつわものの患者さん(何年も退院できない人)がいたので。
自分は「こんな人たちと過ごすのか、なんか怖い」
と思ったもんだ。
マシューもつらかったろうなと思う。

その彼の重荷になっているのが、兄の存在。
物語の後半で、その兄の死のことが語られる。
そこはぜひ読んで確認してほしいが、意外な結末が待っている。
ある種のミステリーとして読んでもいけるかな。

まあいい本だとは思うが、あまり楽しい本ではない。
その辺を覚悟して読んでいただければ、と思います。

 

“THE SHOCK OF THE FALL” by Nathan Filer(2013)