湊町の寅吉

湊町の寅吉

「湊町の寅吉」 作:藤村沙希 絵:MInoru 発行:株式会社学研プラス

時は江戸時代。新潟湊。
廻船問屋の長男寅吉は、いたずら好きで、勉強好きの弟の文助とはおおちがい。
その日も「品引手」といういたずらで、金貸しの金兵衛をひっかけた。
しかし――店の船が難破して、大きな損害が出て、父は金兵衛に借金をするより仕方なくなる。
金兵衛は金を貸す条件として、寅吉に湊祭りの舞台に出て人を笑わせろ、と言った。
店を助けるため、寅吉はその条件を受ける。
寅吉は、七夕にひっかけたお芝居を文助と組んでやることにするのだが…。

第27回小川未明文学賞大賞受賞作品。
時代物、ということだがそんなにむずかしいとは思わなかった。
が…小学生ならどうだろう?耳慣れない言葉とか、ないわけではない。
その辺がこの本のむずかしいところだろう。
大人の目から見れば、そんなにむずかしくない、やさしいよ、といっても、
子どもからすれば、江戸時代のことなんてわかんないよ、と言われればそれまでだ。
江戸時代の暮らし向きの一端が書かれているんだけどなあ。

じゃあ、このブログらしく、大人が読んでおもしろいか、というと
「うーん、まあまあかな」といったところか。
江戸時代の描写にさほど新味があるわけでなく、
寅吉のやる芝居は、現代風のお芝居じゃないかと思わんでもない。
まあ、現代の人が(現代の子どもが)読むんだからそれでもいいのかな、
とも思うが、
リアリズムは追及されていないとはいえる。

まとめれば、小学生向けの読み物としてそれなりに楽しいが、
大人の鑑賞に堪えるほどではない、というところか。
ちょっときびしすぎたかな。
まあよろしければどうぞ。

 

“Minatomachi no Torakichi” by Fujimura Saki(2019)