湊町の寅吉
「湊町の寅吉」 作:藤村沙希 絵:MInoru 発行:株式会社学研プラス
●
時は江戸時代。新潟湊。
廻船問屋の長男寅吉は、いたずら好きで、勉強好きの弟の文助とはおおちがい。
その日も「品引手」といういたずらで、金貸しの金兵衛をひっかけた。
しかし――店の船が難破して、大きな損害が出て、父は金兵衛に借金をするより仕方なくなる。
金兵衛は金を貸す条件として、寅吉に湊祭りの舞台に出て人を笑わせろ、と言った。
店を助けるため、寅吉はその条件を受ける。
寅吉は、七夕にひっかけたお芝居を文助と組んでやることにするのだが…。
●
第27回小川未明文学賞大賞受賞作品。
時代物、ということだがそんなにむずかしいとは思わなかった。
が…小学生ならどうだろう?耳慣れない言葉とか、ないわけではない。
その辺がこの本のむずかしいところだろう。
大人の目から見れば、そんなにむずかしくない、やさしいよ、といっても、
子どもからすれば、江戸時代のことなんてわかんないよ、と言われればそれまでだ。
江戸時代の暮らし向きの一端が書かれているんだけどなあ。
じゃあ、このブログらしく、大人が読んでおもしろいか、というと
「うーん、まあまあかな」といったところか。
江戸時代の描写にさほど新味があるわけでなく、
寅吉のやる芝居は、現代風のお芝居じゃないかと思わんでもない。
まあ、現代の人が(現代の子どもが)読むんだからそれでもいいのかな、
とも思うが、
リアリズムは追及されていないとはいえる。
まとめれば、小学生向けの読み物としてそれなりに楽しいが、
大人の鑑賞に堪えるほどではない、というところか。
ちょっときびしすぎたかな。
まあよろしければどうぞ。
“Minatomachi no Torakichi” by Fujimura Saki(2019)
-
前の記事
キャパとゲルダ 2020.08.29
-
次の記事
この海を越えれば、わたしは 2020.09.05