キャパとゲルダ

キャパとゲルダ

「キャパとゲルダ」 作:マーク・アロンソン&マリナ・ブドーズ 訳:原田勝 発行:株式会社あすなろ書房

以前「ちょっとピンぼけ」という有名なキャパの手記を読んだ。
もう内容を忘れてしまったので、いかんのですが、
「ゲルダ・タロー」のことはその本に出てきたっけ?という感じ。
二人がいっしょにスペインの内戦を取材していたことはこの本で初めて知った。

ということで、二人が活躍したスペイン内戦の取材のことが、
この本のメインの話である。
ノンフィクションノベルとでもいうのか、資料をもとに二人の行動をまるで見てきたように描いている。

二人の撮った写真もたくさん収められており、
有名な「くずれおちる兵士」の写真ものっている。
なんでもこの写真が、実際にあったできごとでなく、演技で倒れるところを取った写真ではないか、
という説もあるそうだ。
なんでも、演技を付けて撮ることはけっこうあったそうで、キャパたちもそういう写真があるそうなのだ。
確かに、「くずれおちる兵士」の写真はあまりにうまく撮れている。
演技と言われても不思議ではない。
ただ写真に迫真の迫力があることは確かで、
仮に演技だとしても、戦場の一断面を描いた傑作だとぼくは思う。

キャパとゲルダの関係は、「恋人以上夫婦未満」といったところだったのだろうか、
互いに助け合っていたものの、それぞれの写真道に分かれていったようだ。
それが、ゲルダの死につながる。
ゲルダの死以後、キャパは女性と付き合っても、結婚しようとか考えたことはなかったようだ。
結婚しようと考えたのはゲルダだけだった。
キャパにとってゲルダはそれほど大きな存在であった。
「運命の人」に出会えるのは、一生に一度だけなのだろうか。

正直読むのに手間取った。もうひとつ打ち込めない本であった。
ただ二人が写真で表現しようとしたものがなんだったのか、
まあそれは戦争の理不尽さであったろうが、
それを読み取ることはできたと思う。
高校生諸君はもとより、大人にも読みごたえのある一冊である。

 

“EYES OF THE WORLD” by Marc Aronson and Marina Budhos(2017)