あした、また学校で

あした、また学校で

「あした、また学校で」 作:工藤純子 発行:株式会社講談社

地域の小学校対抗の大縄跳び大会に、一将の弟将人は出場する――はずだったが。
縄跳びが下手な将人は、朝練に来なければならなかったのに、行かなかったのを
学校一怖い荻野先生にとがめられ、みんなの前できつく叱られてしまった。
さらに他のメンバーからは、「お前は下手だから大会に出るな」と言われてしまう。
落ち込んだ将人は、登校拒否になってしまった。
一将や咲良は、この事態をなんとかしようと動き始めるが、
事態はよくならない。
そして問題が大人たちを巻き込んで、意外な方向へ展開していく――。
「学校は、だれのものか?」

この本も、章ごとに語り手が変わっていくパターンです。
珍しいのは、大人の章があるところで、一将と将人の母親の章と、荻野先生の章が出てきます。
親や先生の立場が描かれている、というところで、大人の読者もターゲットに入っているのだろうと
想像されます。

大縄跳び大会当日のあいさつで、主催者の地域のおじさん(元校長)が言うには、
「勉強を教えるだけなら、人間じゃなくても、ロボットやAIにもできる。
しかし、人にしかできないこともあるはずです。
子どもたち一人一人の力を引き出すことこそ、
学校やわたしたちに与えられた課題ではないでしょうか」

その言葉を受けて、一将はみんなに向かって言います。
「ある先生に、『学校は、だれのものか』って、聞かれました。
ぼくは、そんなことをかんがえたこともなかったので、わかりませんでした。
でも、仲間と考えて、ずっと考えて、やっぱり、ぼくたちのものだと思いました。
でも、黙っていても、ぼくらの思うような学校にはなりません。
みんなで考えて、声を上げていかないと……。
だから、先生や、保護者や、地域の人たち、大人の人は、ぼくらの声を聞いてください。
無視しないでください。ちゃんと聞いてくれれば、みんながよくしたいって思えば……
そうすれば……
きっとみんなが行きたくなるような学校に、なると思いますっ」

この本を読んで、みんながこんな風に思えば、学校は楽しいところになると思います。
小学生をお持ちのおとうさん、おかあさん、この本を読んでみてください。
子どもの気持ちがわかると思います。

“Asita,Mata Gakkou de” by Kudo Junko(2019)