さよ 十二歳の刺客

さよ 十二歳の刺客

「さよ 十二歳の刺客」 作:森川成美 絵:槇えびし 発行:株式会社くもん出版

壇ノ浦の戦いから、ひとり生き残った平氏の姫・さよ。

奥州藤原氏配下の武士・清原良任のもとに身を寄せ、弓馬の腕を磨いていた彼女には、
一族を滅ぼし、自分から幸せな生活を奪った源氏の大将・源義経に復讐をするという野望があった。

兄・頼朝に追われ、都から落ちのびてきた義経が、藤原泰衡の館に滞在していると聞き、
良任とともに平泉にやってきたさよだったが……。

(くもん出版HPから)

平維盛の娘、さよは壇ノ浦の戦いで船から海に落とされたが九死に一生を得て、
宋船で奥州に渡り、清原家に養女として迎えられた。
弓や馬が得意なおてんば姫のさよは、密かに平家の仇源義経の命を狙っていた。

そんなさよに千載一遇の好機が訪れる。
奥州平泉に源義経が落ちのびてきたというのだ。
平泉で行われた流鏑馬の日、見物に来ていたさよを義経が目に留めた。
そして義経は、さよを息子の千歳丸の遊び相手になるよう、申し付けたのであった。
一も二もなく、さよはその申し出を受ける。
さよは義経のそばで暮らすことになった…。

その後は千歳丸との交流が、物語の中心になっていくが、最後はもちろん義経との対決となる。
どうなったかは実際に読んでもらうとして、

さよの父親の平維盛の生き方が、
いかにも現代人(もちろん2019年の現代)的だというところが、
この本のおもしろいところだと思った。

戦で維盛は義経を捕えた。そのとき維盛が言ったことには、

「戦などなんの役にたつのだと。殺しあってなにがうれしいと。
そして相談だが、といった。おまえをはなしてやろうではないかと。
おまえが(源)頼朝のところに行けば、頼朝は弟のおまえをいずれ、
源氏の総大将にするにちがいない。そのときに…(中略)
…そのときに、平家の総大将の自分と、源氏の総大将のおまえとで、話をしよう。
そして、戦のない世にしようと」 (211P)

維盛は戦を好まず、家庭を大事にする男として描かれている。
さよが、おてんばだが優しいところもある姫に育ったのは、
この父あってのことだったのだろう。

戦いの世でも、個人を大切にすること。これは源平の世にあった考え方か?
というと、うーんちがうんじゃないかと思いますが、
現代の世の中に合う考え、ということで森川さんもこういう展開にしたのだと思います。
そこに、歴史小説が書かれていく意味があるのだろうと思います。

みなさんも「さよ」の活躍をお楽しみください。

“Sayo Jyuunisai no Shikaku” by Shigemi Morikawa(2018)