さよ 十二歳の刺客
- 2019.05.26
- 児童書・日本
「さよ 十二歳の刺客」 作:森川成美 絵:槇えびし 発行:株式会社くもん出版
●
壇ノ浦の戦いから、ひとり生き残った平氏の姫・さよ。
奥州藤原氏配下の武士・清原良任のもとに身を寄せ、弓馬の腕を磨いていた彼女には、
一族を滅ぼし、自分から幸せな生活を奪った源氏の大将・源義経に復讐をするという野望があった。
兄・頼朝に追われ、都から落ちのびてきた義経が、藤原泰衡の館に滞在していると聞き、
良任とともに平泉にやってきたさよだったが……。
(くもん出版HPから)
●
平維盛の娘、さよは壇ノ浦の戦いで船から海に落とされたが九死に一生を得て、
宋船で奥州に渡り、清原家に養女として迎えられた。
弓や馬が得意なおてんば姫のさよは、密かに平家の仇源義経の命を狙っていた。
そんなさよに千載一遇の好機が訪れる。
奥州平泉に源義経が落ちのびてきたというのだ。
平泉で行われた流鏑馬の日、見物に来ていたさよを義経が目に留めた。
そして義経は、さよを息子の千歳丸の遊び相手になるよう、申し付けたのであった。
一も二もなく、さよはその申し出を受ける。
さよは義経のそばで暮らすことになった…。
その後は千歳丸との交流が、物語の中心になっていくが、最後はもちろん義経との対決となる。
どうなったかは実際に読んでもらうとして、
さよの父親の平維盛の生き方が、
いかにも現代人(もちろん2019年の現代)的だというところが、
この本のおもしろいところだと思った。
戦で維盛は義経を捕えた。そのとき維盛が言ったことには、
「戦などなんの役にたつのだと。殺しあってなにがうれしいと。
そして相談だが、といった。おまえをはなしてやろうではないかと。
おまえが(源)頼朝のところに行けば、頼朝は弟のおまえをいずれ、
源氏の総大将にするにちがいない。そのときに…(中略)
…そのときに、平家の総大将の自分と、源氏の総大将のおまえとで、話をしよう。
そして、戦のない世にしようと」 (211P)
維盛は戦を好まず、家庭を大事にする男として描かれている。
さよが、おてんばだが優しいところもある姫に育ったのは、
この父あってのことだったのだろう。
戦いの世でも、個人を大切にすること。これは源平の世にあった考え方か?
というと、うーんちがうんじゃないかと思いますが、
現代の世の中に合う考え、ということで森川さんもこういう展開にしたのだと思います。
そこに、歴史小説が書かれていく意味があるのだろうと思います。
みなさんも「さよ」の活躍をお楽しみください。
“Sayo Jyuunisai no Shikaku” by Shigemi Morikawa(2018)
-
前の記事
野生のロボット 2019.05.11
-
次の記事
その年、わたしは嘘をおぼえた 2019.06.02