この川のむこうに君がいる
- 2019.04.01
- YA・日本
「この川のむこうに君がいる」 作:濱野京子 発行:株式会社理論社
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梨乃は、あえて同じ中学出身者のいない都内の高校を選んだ。
それは、3.11の被災者であることを隠し、高校生活をまっさらな状態で始めたいと思ったからだ。
大震災から三年後の、被災地から遠く離れた場所で、若い心の軌跡を追う物語。
*編集者コメント
被災した二人の高校生は偶然高校の同じ吹奏楽部で一緒になります。
人は移動し、震災の哀しみも移動して、さまざまな出会いを生んでいきます……。
傍らのその人がそうかもしれない。その想像力を大事にしたいと思う物語。
(理論社HPから)
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梨乃は、東日本大震災で兄を失いました。
忘れたい記憶――だから彼女は自分の過去のことを誰も知らない高校に進学しました。
けれども、そこには被災者の遼がいました。彼は被災者であることを隠していませんでした。
二人は徐々に引きつけられていきますが…。
まあこんな感じですか。
震災を受けた人の気持ちってどうなんだろう?
すごいショックで立ち直れない人もいるだろう。
梨乃はパニックの発作を起こしたりする。
同情が迷惑な場合もあるだろう。
それでも結局梨乃はみんなに被災者であることを打ち明けて、
肩の荷が下りたようである。
つらい記憶を少しでも消すために、
大きな努力が必要なんだと思った。
避けようのない自然災害。
明日は我が身かもしれません。
そんなわけで被災者であり、そして思春期の女の子である梨乃の、
複雑な心理を描いて、とても考えさせられる一冊でありました。
“Kono Kawa no Mukou ni Kimi ga Iru” by Kyoko Hamano(2018)